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光硬化樹脂の硬化不良をチオールで解決!(酸素阻害による)

投稿日:2022/05/05

弊社多官能チオール製品をUVアクリレート硬化へ応用した際の特長をご紹介します。

UVアクリレート硬化と酸素阻害

コーティングやインキ等の用途で製膜・硬化にUVや光をエネルギー源として使用する方法が広く用いられています。古くは古代エジプトでミイラを作る際に、表面にアスファルトを塗りつけて日に晒し固めたとの記録があるそうです。現在ではアスファルトに代わり様々な化合物が実用化されていますが、主流はアクリレート・メタクリレート化合物を用いる光ラジカル硬化系でしょう。UVの光エネルギーをもらって発生した炭素ラジカルを活性種として、モノマー・オリゴマーが架橋していく化学反応が基本になります。反応機構やメリット等詳しくは他紙に譲るとして、今回はデメリットの一つである酸素阻害に着目してみましょう。

コーティングをイメージするとわかりやすいですね。ワークにUV塗料を塗って、UVを当てて硬化膜を作ります。この時の膜厚が結構重要で膜厚をどんどん薄くしていきますと、UVをいくら当てても表面が硬化せずベタベタしたままの硬化不良が起こってしまいます。原因は大気に含まれる酸素が原因とされ酸素阻害と呼ばれています。塗られたUV塗料の膜に大気と触れている表面から酸素が膜内部に拡散しますが、この状態では発生した炭素ラジカルと酸素が反応して過酸化物ラジカルができてしまいます。この過酸化物ラジカルは膜成分のアクリレート・メタクリレート化合物とは反応することができず、このせいで架橋反応が止まってしまいます。適度な膜厚であればUVによって炭素ラジカルがたくさん発生しうまく生き続けて、表面までしっかり硬化した膜が出来上がります。膜厚が薄いと膜体積に対して大気と接する表面の影響が大きくなってしまい、発生する炭素ラジカルの数に対して阻害原因の過酸化物ラジカルの影響が無視できなくなる為です。

酸素阻害による硬化不良の対策としては、酸素を遮断する為に不活性ガス中で硬化させる事、開始剤の増量やUV照射の強度を上げ発生する過酸化物ラジカルに負けないだけの炭素ラジカルを生成させる事や、発生した過酸化物ラジカルを捕捉してしまう第三成分を添加する事などがあります。

酸素阻害とチオール

弊社の多官能チオールは、チオール基の高い反応性をもって過酸化物ラジカルと反応することができます。これを生かした酸素阻害を防ぐ第三成分としての利用法が挙げられます。下に酸素消費回路図を載せました。上段中ほどに炭素ラジカルがありますが、これとアクリレート・メタクリレート化合物が連鎖的に反応して架橋させるのが本来の狙いです。この炭素ラジカルと酸素が反応して過酸化物ラジカルが生成する反応阻害の流れも右側に示しています。ここでチオールの出番です。末端のチオール基の活性が高いので、アクリレート・メタクリレート化合物とは反応できない過酸化物ラジカルもチオール基とは反応し、チイルラジカルを発生します。このチイルラジカルがアクリレート・メタクリレート化合物と再び反応し活性な炭素ラジカルを再生します。チオール化合物を添加することでこのような酸素消費回路ができ、結果として酸素阻害による硬化不良を防ぐ事ができます。

Fig. 酸素消費回路

おわりに

多官能チオールは古くから知られている化合物であり、おそらく「臭いヤツね。」の第一印象で認識されているでしょう。しかしながら今回ご紹介したような興味深い特徴を持つことも知られてきています。皆様がUVアクリレート硬化の新しい領域に挑戦される際に、チオール化合物が有力なヒントになる事を願ってやみません。

ご興味ございましたらHP下部「お問い合わせ」よりお気軽にお問い合わせください。

 

*本記事は、記載内容を保証するものではありません。

関連リンク

光硬化樹脂チオール系増感剤のことをもっと知りたい方は、以下の記事も併せてご参照ください。

▷ 光硬化樹脂チオール系増感剤の特長

▷ チオール製品の特長と選択ガイド

▷ 多官能チオールで光硬化樹脂の黄変解決!

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